今更はてなアイデアの予測市場の機能について述べてみる
はてなアイデアは予測市場のシステムを取り込んでいます。厳密に言えば予測市場ではない、という意見もありますが、コンセプトとしては予測市場です。しかし、ちょっと調べた限りでは、はてなアイデアは予測市場と勝利条件が異なっているため、予測市場の機能を活用できていないんじゃないか、と思えました。以下にて、ちょっと述べてみます。
予測市場では、自分の予測を的中させることが参加者が最大の満足を獲得する条件、すなわち参加者にとっての勝利条件です。ところが、はてなアイデアでは、自分が望むアイデアを採用されることが勝利条件となります。アイデアを的中させても、自分が望むアイデアが採用されなかったら意味が無いのです。
予測市場の例としてよく挙げられる、アカデミー賞の受賞作を当てる、という市場では、予測市場の結果は受賞の選考に影響を及ぼしません。参加者は、自分のひいきでない作品銘柄を購入しても実際の選考には関係がないため、的中のみを勝利条件に見据えて行動することができます。
しかし、はてなアイデアでは、予測市場の結果に基づいてアイデアの採用が決まります。参加者の行動がダイレクトに選考に影響を与えるわけです。このような状況下では、参加者は自分が好ましいと思うアイデアを「ひいきして」購入しようとするでしょう。もしユーザーが予測の的中(それに伴うはてなアイデアポイントの獲得)を勝利条件とするとしたら、自分の好むアイデアが採用の可能性が無いほど落ち込んでいるか、どのアイデアにも興味が無い場合でしかありえません。
上の論旨について述べられている(さらに対案まで出されている)エントリーのbetaグループ - 集団性妄想科學日報(仮) - はてなアイデア予測市場廃止会議まとめでは、以下のように述べられています。
「予測」と「願望」は全く違う。株式市場では「この銘柄が上がって欲しい」と思いながら株を買うのではなく「この会社は将来伸びるだろう」と予測して株を買う。予測市場でもそれは同じで、「こうなったら嬉しい」と思ってポイントを投資するのではなく「この意見は有望そうだ」との判断で為されなければならない。
が、はてなアイデアは飽和した「はてなダイアリーへの要望」の代替として発生し、最初から願望受け付け窓口としての性格が強かった。冷静な投資家が居らず、誰もが願望に投資したため、破綻を来したわけだ。
そもそも、予測市場のキモは、集団知の活用にあります。当事者だけではなく、多様な第三者のバイアスを集積して、精度の高い(バランス度の高い)予測をしましょう、というものです。参加者が当事者になってしまったら、予測市場のキモが機能しなくなるような気がします。上のエントリーでは「願望」と「予測」を分離させるべきだと述べられていますが、その通りだと思いました。
参考リンク
betaグループ - 集団性妄想科學日報(仮) - はてなアイデア予測市場廃止会議まとめ
「はてなアイデア」の何が革新的なのか: H-Yamaguchi.net
Amazonで予測市場を使ったらどうなるだろう?
ちょっと予測市場に興味を持って調べてみました。予測市場とは、ある事象を予測するのに、仮想通貨を使った取引を用いる方法です。ものすごく大雑把に言えば、例えばアカデミー賞の受賞作品を予測する場合、候補作品の中から「受賞すると予測される作品」を仮想通貨を使って売買し、ついた値段が高い程受賞する確率が高いと判断する仕組みです。予測市場が終了するときに、もっとも高い値段の付いた作品の「銘柄」を購入していた場合、何らかの報酬がもらえます(Tシャツとか、的中者リストに載るとか、非金銭的なものが多いようです)。通常のアンケートと違うのは、「投票」ではなくて「取引」である点です。自分が受賞されると思われる作品に投票するのではなく、みんなはどの作品が受賞されると考えるのかを予測して当てることが、報酬を得られる条件として組み込まれています。詳しくは「予測投票」とは何か: H-Yamaguchi.netを参照下さい。
で、思ったのはこの予測市場をAmzonに使ったら面白いんじゃないか、ということです。
Amazonでは発売前のゲームソフトにレビュー(というよりも期待といちゃもん)を書く人が大勢います。つまり、発売前の商品について興味を持っている人、語りたい人は多いわけです。予測市場を使ったら結構な人数が参加するんじゃないでしょうか。例えば、
という仕組みにするわけです。
Amazonとしては売上予測で在庫管理がより効率的にできるし、予測市場を開くことが新商品の宣伝にもなるし、予測市場の取引についてブログに書く人が出てくれば口コミ効果も期待できるんじゃないでしょうか。ただ、自分が予測市場で購入してない作品の評判を貶めようとするレビュー荒らしが増えそうな気がしないでもないですが。
本当にヤフーのコンテンツはキラーコンテンツとなるのか
ソフトバンクのボーダフォンの買収後の成り行きについて、多くの人がヤフーのコンテンツがドコモとauの携帯コンテンツを駆逐し、ユーザーに大きな訴求効果をもたらすだろう、と推測されています。しかし、私はこの推測はPCユーザーの思い込みであり、ネット=携帯のユーザーにはヤフーは言われるほどの訴求効果はもたないのでは、と考えています。以下にて、その論旨をつらつらと。
ヤフーのコンテンツによりドコモとauのコンテンツが駆逐される、という考えの人は次のような前提を持っていると思われます。
しかし、この前提はPCユーザーでのみ通じる理屈であり、PCを使わない携帯オンリーのユーザーには通じないのではないでしょうか?
まず、「1.iモード(EZweb)はインターネットのまがい物である。みんな、まがいものではない本当のネットを使いたいはず!」について述べます。携帯は使うがPCは使わない、というユーザーは多くいます。PCは自分専用機とするには高額ですが、携帯なら数万円で済みますし、機種にこだわらなければゼロ円で購入できます。中高生や若い女性に、こういったユーザーが多く含まれると考えられます。そして、その多数いるであろうユーザーにとってはiモードとインターネットの違いなんて分からないし、興味も無いでしょう。ゆえに、1.の前提は携帯オンリーのユーザーには通用しないと思われます。彼ら彼女らにとって大事なのは、本物かまがい物かというよりも、コンテンツのよしあしなのです。
次に「2.携帯のコンテンツはポータルのコンテンツに劣っている。」について述べます。上にて述べたように、携帯ユーザーはインターネットよりもiモードにずっと触れてきたわけです。そのため、iモードのインターフェイスとコンテンツが標準となっています。そんな彼ら彼女らに、ソフトバンクがヤフーのコンテンツを独自色で押し出したとして、彼ら彼女らが喜ぶでしょうか。むしろ、慣れ親しんだコンテンツとの違いに、違和感と使いづらさを感じるのではないでしょうか。ゆえに、2.の前提も携帯オンリーのユーザーには通用しないように思います。
以上のように、ヤフーのコンテンツがドコモとauの携帯コンテンツを上回る訴求効果を持つという前提である、
は、携帯オンリーのユーザーには通用しないと言えます。ソフトバンクがヤフーコンテンツを打ち出せば携帯コンテンツは一気に駆逐される、というのは思い込みではないでしょうか。
もちろん、携帯オンリーユーザーとの齟齬が永遠に続くとは思えません。低価格路線でユーザーを取り込みながら、仕様変更を漸進的に繰り返してソフトバンク仕様の(というかヤフー)に慣れさせれば、ユーザーはソフトバンクを違和感無く受け入れるようになるでしょう。ただ、PCコンテンツが携帯で使える!とか、携帯とPCとの連動、といったサービスが本当にキラーコンテンツとなるのか、疑問に感じます。携帯オンリーのユーザーにとっては、固定と携帯の融合など大して興味は無いでしょう。なぜなら、彼ら彼女らのネット生活は携帯で完結しているのですから。
実録!リテラシーの低い人間の検索のやり方
以前、はてなのインターフェイスのカオスさを東京の都市設計に例えたエントリーを読んだ記憶があったのですが、もう一度それを読みたくなり、検索してみました。以下にて、私が目的のページにたどり着くまでの試行錯誤を書いてみます。
- まずGoogleで「はてな 都市」で検索してみます。検索結果の一番上に「はてなダイアリー - 都市とは」のリンクが出ています。
- リンクの説明部分に「偶然 - 都市空間化するはてなを考えてみた」という探しているエントリーと思われるものがあったので、このリンクへ飛んでみます。あれ、さっきのエントリーが出てこない・・・。エントリー単位でなく、日記単位で出てくる・・。エントリーに行きたいのに。
- しょうがないので、このページ(はてなダイアリー)上部の検索BOXに「都市空間化するはてなを考えてみた」と入れてみます。でも、日記へのリンクが表示されるだけで、目的のエントリーが出てこない・・・。
- めんどうなので、Googleで検索したところ一発で一番上に出ました。
- ここで、ちょっとはてなを不満に思います。目的のエントリーははてなダイアリーなのに、なぜはてな検索よりもGoogleの方が精度が高いのでしょう?Googleがすごすぎるのでしょうか?一応、はてな検索でも、2つ目にエントリーが書かれたブログがヒットしています。でも、見たいエントリーへの直通便ではありません。ブログへ飛んでから、目的のエントリーを探さなくてはならなくなります・・・。
- 不満に思った後で、私がこのエントリーを読んだのは、はてブ経由だったことを思い出します。で、はてブで「都市」で検索したところ、5番目にヒットしました。*15番目ですがこっちは直通便ですし、検索ワードも1つで目的にたどり着けたので、今回の検索においては、はてブの検索結果が一番ラクで早かったです。
- このとき、そもそも、はてブを使い出して以来、ネット上の過去に見て印象に残った情報は、大部分がはてブ内にあることを思い出します。今後は「前に見たアレ、どんな内容だったっけ?」と思ったときは、とりあえずはてブを使ってみようと決める。
- ここで、はてブの検索結果において、「注目」エントリーは時系列で並べられていることに気がつきます。おお、これを使えば、あるキーワードないしタグがどのような扱いをされてきたのか、その変遷をたどることができて面白いかもしれない。
- とりあえず、「ライブドア」タグを検索してみることにします。ニッポン放送買収騒動あたりの時期から、現在に至るまでの変遷を見たい。が、ヒットするページが一杯。一気に過去までさかのぼろうとしますが、25件ずつしか検索結果のページを進められません。ライブドアは大人気のため、1ページで1日ぐらいしか進みません。
- あきらめる。どうも、そういう使い方は想定していないみたいです・・。
以上です。
我ながらアホっぽいです。さっさとはてブで検索をすれば済んだ話です。けれどもこの試行錯誤を通じて感じたのは、自らのアホさ加減だけではなく、はてなに対する隔靴掻痒な感情をでした。はてなは多機能でいろいろできるがゆえに、なれていない人間では、欲しい情報ややりたいことにダイレクトにたどり着けないのです。例えば、はてなの検索結果をMooterみたいに「キーワード」「ウェブ」「はてブ:タグ」「はてブ:キーワード」でクラスター分けして表示するとか、あるいは「このキーワードをはてブで検索」を検索結果に表示させるとか、そういったはてなの提供しているサービスの連動がされていれば、アホでも早めに目的のページへたどり着けたのではないでしょうか?なんというか、こう、はてなには、提供しているサービスの連動というのが欠けているような、そんな印象を受けます。
加えて、「どう使うか分かりやすいサービス」よりも「何のために使うか分からないけど面白そうなサービス」に舵をきっているようですけど、それによって新規ユーザーを増やす機会を逃しているようで、すごくもったいない気がします。せっかく、日経新聞とかプレジデントとか、ネットに慣れていない人が読むようなメディアにはてなや近藤さんの名前が載り、はてなについて言及しているウェブ進化論も売れているのですから、分かりやすくすればユーザーは一気に増えると思うのですが・・。
はてなはすごく面白いのに、とっつきにくい。とっつきにくいけど、慣れれば面白い。良くも悪くもツンデレですが、現実には胡散臭いくらいデレデレな方*2がもてるわけで・・・。しかし、最近、はてなのことばかり考えてるなあ。
*1:この時は、です。後で確認したところ、6番目になってました。
*2:臨死!!江古田ちゃんに出てくる猛禽みたいな子
面白い仕事とおいしい年収を得るため、イノベーションのジレンマを使ってみる
イノベーションのジレンマとは、競争に勝つためには自社を市場に適応させなければならないが、適応した結果市場の変化に対応できなくなる、ということを意味します。主な論旨を書きますと、
- 既存の勝ち組企業は、技術力を上げ、社内のリソースを最大効率で配分するシステムを作り上げることにより、勝者の地位を築く。
- 一方、既存の市場を覆すような新技術(破壊的技術)は、初期段階においては並の技術力であるために価格が安く、そのため利益率が低い。
- このため、効率的なリソース配分システムを持つ企業は採用しない。
- しかし、市場において、製品の技術進歩の速度が、顧客の利用能力の速度を超えてしまった場合、すなわち、顧客が今の製品の性能に満足していて、これ以上の技術の発展には興味を示さない場合、技術は並の製品でも顧客は喜んで購入しようとする。
- 結果、既存の勝ち組企業は、破壊的技術を有する新興企業によってローエンドの市場から徐々にシェアを奪われていき、最終的には高品質で利益率は高いが規模は小さいマニア層の市場に追いやられてしまう。
という流れになります。
これを社内における、面白い仕事とおいしい年収を得るための仕事の奪い合いに置き換えて考えてみます。各用語は、以下のように置き換えます。
- 市場→部署の仕事
- 製品→仕事の成果
- 技術力→担当者の仕事の処理能力
- 社内のリソース配分→担当者のリソース配分
- 価格→管理職からの評価
- 利益率→担当者が獲得する報酬(給料・地位)
- 既存の勝ち組企業→できる先輩(今、面白い仕事とおいしい年収を得ている人)
- 新興企業→若手
- 顧客→管理職
置き換えた結果は以下の通りです。
- できる先輩は、仕事の処理能力を上げ、自身のリソースを最大効率で配分するシステムを作り上げることにより、勝者の地位を築く。
- 一方、今までの部署の仕事を覆すような新しい仕事(破壊的仕事)は、初期段階においては並の処理能力でこなせるために管理職からの評価が低く、そのため報酬(給料・地位)が低い。
- このため、効率的なリソース配分システムを持つ、できる先輩はそんな仕事は引き受けない。
- しかし、部署の仕事において、仕事の成果に求められる処理能力進歩の速度が、管理職の要求する水準の能力の進歩速度を超えてしまった場合、すなわち、管理職が今の仕事の成果水準に満足していて、これ以上の処理能力の発展には興味を示さない場合、成果が並の社員でも管理職は喜んで仕事を任せようとする。
- 結果、できる先輩は、今までの部署の仕事を覆すような新しい仕事(破壊的仕事)を担当する若手によってローエンドの仕事から徐々にシェアを奪われていき、最終的には地位は高いが規模は小さいマニア層の仕事に追いやられてしまう。
・・・少々苦しいですが、なんとか置き換えられます。このことから、面白い仕事とおいしい年収を得るには、できる先輩の後をがむしゃらに追いかけるのではなくて、「今は評価は低いけど、将来は高い評価を得られそうな仕事」を掘り当てることを心がけるのが良いのじゃないか、と思いました。
参考リンク
「努力すればスキルが向上して上に昇れる」というのは幻想 - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだ
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本
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LLPをベンチャーで使う場合のデメリット
http://chou.seesaa.net/article/13892192.htmlを読んだのですが、LLPってベンチャーに使えるのだろうか?使えないんでは?と思いました。以下にてその理由をつらつらと。
リンク先のエントリーでも述べられていますが、LLPのメリットは以下の3点にあります。
従来の任意組合(民法上の組合)においては、出資者は無限責任を負わされていたのですが、LLPでは有限責任に留まるのが、特徴です。
一方、LLPのデメリットは、法人格が無いことです。法人格が無いことによるデメリットは、そのまま株式会社に変更できないという点です。株式会社に変更できないと言うことは、IPOできないということです。一攫千金を狙って起業する人にとっては、これは痛いのではないでしょうか。
じゃあ、法人格のあるLLPという仕組みは無いのか?と言うと、LLCというのがあります。しかし、LLCでは法人格が認められているがゆえに、法人税がとられてしまいます・・。意味ないですね。なんでも、LLCは本来は法人税はとられない仕組みにするはずだったのですが、財務省が認めなくて、現在のような中途半端なものになってしまったそうです。
そんなわけですので、LLPはベンチャーというよりも、税制上のメリットを狙った合弁会社の代替としてのヴィークルなんじゃないかなあ、と思います(もちろん、全てのベンチャーがIPOを目標としているわけではありませんが)。
と、ここまで書いた後でネットで調べたらこんな記事が。
「LLPはベンチャー設立に向いている」という説は本当か - CNET Japan
私のエントリーと同じことがもっと詳細に書いてあります。というか、私ブクマしてました・・・orz