ソフトバンクがGoogleを殺す?

ソフトバンクののボーダフォン買収について、いろいろな考察がされています。大勢の方が予想されている合併後のビジネスモデルは、ヤフーのコンテンツを使った「livedoor wireless」モデルのようです。コンテンツと通信費をユーザーには採算度外視の低額で提供し、収益は広告費で賄う、というモデルですね。あけすけに言えば、「ヤフーの固定通信を契約されている方なら、月500円払うだけで、メールし放題&ヤフー同士の電話はタダ&ヤフー内であれば通信費はタダ」というプランを、パケホーダイプランとは別口で提供する、というような。
ソフトバンクは固定通信でトリプルプレイ(「インターネット接続」「IP電話」「映像配信」)を実現していますから、これに携帯電話を加えた、クワトロプレイを超低額で提供するわけです。しかし、もし、この超低額クワトロプレイが実現した場合、日本のWebアプリ市場がヤフーに飲み込まれてしまうのではないでしょうか。以下にて、その理由を述べてみます。
恐らく、ソフトバンクはヤフーのコンテンツをPCでも携帯でも使えるようにする際、Y!ボタンを作るなど、ヤフーのコンテンツに直結するような仕組みを整えて、ユーザーをヤフーコンテンツに誘導しようとします。上で挙げたプランを採用すれば、コンテンツは通信費こみで無料のため、ユーザーは携帯ではヤフーのWebアプリを使うようになるでしょう。そうなると、PCで使っているWebアプリについても携帯と連動しないのを「不便」と感じるようになり、ヤフーアプリに乗り換えるようになるのではないでしょうか。
例えば、RSSリーダーをPCではてなを使っていたとして、ソフトバンク携帯を使うようになった場合を考えてみてください。携帯ではてなRSSを使うには通信費がかかります。これを嫌って、PC中心のユーザーは携帯ではMy yahooを使うようになります。しかし、携帯でRSSリーダーを見ることに慣れてくるうちに、同じ機能のアプリなのに携帯とPCで別々のアプリを使い分けなくてはならないこと(連動しないこと)に「不便さ」を感じるようになります。この不便さを解決する方法は以下の2つです。

  1. 通信費をはらって携帯でもはてなを利用する
  2. PCで利用するアプリをはてなからMy yahooに乗り換える(通信費はタダ!)

はてなとヤフーの機能にそれほど差が無かった場合、はてなにこだわりを持たないユーザーはヤフーに乗り換えるのではないでしょうか。ましてや、携帯は慣れているがPCは初心者、というユーザーがPCを使い出した場合、なおのことヤフーを優先的に使うようになるでしょう。
つまり、ヤフーが「通信費の縛り」と「WebアプリのPCと携帯電話の連動」を提供することにより、その環境をユーザーは基準に捉えるようになり、ヤフー以外の「金がかかって不便な」アプリを利用しないようになるわけです。さらに、他社が新しくて面白そうなWebアプリを提供しても、「でもそれって携帯ではお金かかるんでしょ?それに本当にすごいものなら、そのうちヤフーがはじめるよ。」と、ヤフーがリリースするまで待つユーザーが出てくるでしょう。「携帯で使えるかどうか」がPCでのアプリ利用の決定要因となっていくわけです。ライトユーザーほどこの傾向が顕著になります。その結果、日本のWebアプリの市場の縮小していくのではないでしょうか。
Webアプリを作る会社の活路としては、マニア向けに特化するか、ヤフーに買ってもらうか(買い叩かれるでしょうが)、ヤフーと提携して技術提供するか(足元を見られそう)・・・。どうなるにせよ明るい未来は想像しにくいです。
もしこのシナリオが実現した場合、Googleもその影響を大きく受けるでしょう。解決方法として考えられるのは、自らも通信に参入する、MVNOをやる、みかじめ料を払ってGoogleへのアクセスは無料にしてもらう、などですが、外資の通信への参入は総務省が認めるか微妙なところですので、MVNOか、みかじめ料あたりが選択肢となりそうです。最悪の場合、eBayのように日本から撤退することも有りうるでしょう。そうなったら、Googleを殺したソフトバンクが、Amazonの日本法人も買収してYahoozonが誕生、なんて未来が待っているのかもしれません。
参考リンク
ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ: R30::マーケティング社会時評