凡庸な新ブランド名がキャリアの戦略を覆す?

ソフトバンクボーダフォン日本法人を買収しましたが、買収後はボーダフォンブランドではなく、新ブランドで展開していくそうです。で、疑問に思ったのですが、新ブランドになったら、またメールアドレスのドメイン名は強制的に変更させられるのでしょうか?
もしそうなると、潜在的ボーダフォンに不満を持っていたけどMNPではメールアドレスが変更できないのでキャリアは変更していなかった、というユーザーが「いい機会だから」と他キャリアに移るきっかけになってしまいます。これを防ぐためには

  • 将来のサービス展開への期待感をユーザーに持たせる。
  • ドメイン強制変更時点で他キャリアよりも満足度の高いサービスを提供しておく。

のどちらかが要求されます。孫さんいわく、新ブランドのリリース時期は「今後半年から1年」で、サービスも半年後から出し始めるようなので、今後はまず、手っ取り早く低価格でユーザーをひきつけておいて、半年後からサービスを展開していく、という流れが常道でしょう。
問題はどのくらいの低価格を打ち出すかということですが、LBOは将来の期待収益を担保に借金するスキームなので、下手に価格競争に火をつけてしまうと命取りになりかねません(ソフトバンク本体の損失は2000億に留まりますが)。よって、それほど極端な低価格を提示することはないような気がします。ただ、このさじ加減は難しいものになります。なぜなら

  • 中途半端な低価格では、他キャリアも追随してきて差別化の意味が無い。
  • 他キャリアが追随できないような超低価格戦略を打てば、借金が返せなくなる。

という二律背反な状況に置かれるからです。
しかし、この状況を解決する方法があります。
まず、

のです。そして、以下のサービスを実行するのです。

  • 携帯のアドレスをPCと共有できるようにする。
  • 従来yahooのアカウントを持っている人は、そのメールアドレスでソフトバンク携帯が利用できるようにする。

こうすれば、現在yahooのアカウントを持っているユーザーはそのままソフトバンク携帯の潜在ユーザーとなります。
また、
・他キャリアの人間に対してもyahooドメインでの携帯メール利用を許可する。*1
というサービスを打ち出せば、「MNPではメールアドレスを変更しなくてはならないが、ソフトバンク携帯ならキャリアに依存しませんよ」と訴えることもできます。
これらのサービスを実行すれば、少なくともPCでyahooメールを使っているユーザーはyahooドメインを積極的に利用するようになります。そのうち、ソフトバンク携帯と違ってヤフーに直接アクセスすることはできない他キャリアに苛立ち、乗り換えようとするユーザーも多数出てくるでしょう。いやになったらまた戻ればいいのですから。つまりソフトバンクは、これまでキャリアが行ってきたユーザーを囲い込む戦略ではなく、ユーザーを解き放つ戦略を打ち出すことにより、巨大な訴求効果を生み出せるのです。まさに泥臭い営業などしなくても、シェアを一気に奪うことができるでしょう。
というわけで、私は新ブランドはズバリ「Yahoofone」のような、yahooブランドを前面に押し出したものになると思います。そしてドメイン名は上で述べた理由により、yahooになると予想します。凡庸すぎてつまらないかもしれませんが、大きな可能性を示唆する名前ではないでしょうか。

参考リンク
日本史上最大のディールについての簡単な感想: R30::マーケティング社会時評
ソフトバンク1.75兆円買収のワザ:LBO・ノンリコース・リードアレンジャー - ITジャーナリスト三上洋 事務所
ボーダフォンの新ブランド名は何になるのか予想 - キャズムを超えろ!
買収でボーダフォンユーザーはどうなる? (1/2) - ITmedia Mobile

*1:現在の携帯アプリを使ったメールサービスとは別物